管理型産廃処分場工事及び操業差し止め裁判全面勝利に至るまで
2007.2.25
高田 豊(東総)
(1)本件処分場計画の概要
ア.業者 株式会社エコテック(旧伸葉都市開発)
イ.施設の種類 産業廃棄物管理型最終処分場
ウ.処理する産業廃棄物の種類
汚泥、燃え殻、ばいじん、鉱さい、がれき類、金属くず、廃プラスチックなど
エ.設置場所 旧海上町、銚子市、東庄町にまたがる谷津、忍川の水源
オ.処理能力 埋立面積 4万7854
埋立容量 74万2838m3
(2)経過
1988年4月16日 伸葉都市開発、千葉県に産廃処分場建設の事前協議書を提出
1990年5月30日 県は伸葉都市開発に対し、処理水の忍川放流の変更を指示(忍
川が銚子市の水道水源であるため)
1992年5月25日 伸葉都市開発は処理水は忍川へ放流せず、蒸発散装置で蒸発さ
せる計画変更を届け出
1998年5月29日 千葉県は一市二町に事前協議終了を通告。
同年6月 8日 伸葉都市開発、産廃処分場設置許可申請を千葉県に行う。
同年8月30日 旧海上町は本件処分場建設の是非を問う住民投票を実施。建設
反対票97.6%
1999年4月27日 千葉県は蒸発散装置が計画どうり機能することは困難であると
し、申請を不許可処分
同年5月14日 伸葉都市開発、県の不許可を不服とし、旧厚生省へ行政不服審
査請求を申し立て
2000年3月30日 旧厚生省は、基準値を満たせば処理水は放流してよい、蒸発散
装置は義務づけていないとして、県の不許可処分を取り消す
2001年3月 1日 沼田前知事の任期終了間際に千葉県はエコテック(旧伸葉都市
開発)に対し建設を許可。
同年5月29日 原告7名で県知事に対し許可処分取り消しを求めて行政訴訟を
提起。
同年12月4日 県はエコテックに対し本件処分場工事着工を許可。
2002年2月12日 住民438名で本件処分場建設等の差し止めを求める仮処分命
令の申し立てを行う。
2003年1月24日 旧海上町議会、「エコテック産廃処分場建設反対と県民世論に
訴える」決議を議決。
同年6月 4日 仮処分命令申し立て却下。
同年10月15日 原告100名で「エコテック産廃処分場建設操業差し止め」を
求めて提訴(本訴)
2005年5月10日 仮処分申し立て却下に対する東京高裁への抗告棄却。
同年10月11日 最高裁で仮処分却下に対する特別抗告及び許可抗告棄却。
2005年11月25日 合併後の旭市議会で「エコテック産廃処分場建設反対と県民
世論に訴える」決議を議決。
2006年10月25日 本訴最終弁論、結審
2007年1月31日 千葉地裁、「エコテック産廃処分場の建設、使用、操業差し止め」
の判決を下す。住民側勝訴
同年2月13日 エコテック、判決を不服として東京高裁に控訴。
同年3月13日 行政訴訟最終弁論。結審。・・・5月中旬頃、判決言い渡し?
(3)原告100名の構成
*Aグループ
飲料水及び生活用水を地下水に依存する者であり、本件処分場から漏出する有害物質及
び汚染水により健康被害を被る者
*Bグループ
地下水を農業用水に利用する者であり、本件処分場から漏出する有害物質及び汚染水に
より、農作物の被害を受けるとともに、これによる健康被害を被る者
*Cグループ
表流水(忍川、その他河川)を農業用水に利用する者であり、本件処分場から漏出する
有害物質及び汚染水により、農作物の被害を受けるとともに、これによる健康被害を被
る者
*Dグループ
表流水(忍川)を水道水源として利用する可能性のある者であり、本件処分場から漏出
する有害物質及び汚染水により健康被害を受ける者
*Eグループ
本件処分場の建設、操業によりダイオキシンなどの有害物質の飛散によって健康被害を
被るとともに、良好な環境を享受する権利を侵害される者
(4)裁判の争点
)楫鐔菠場へ廃棄物を搬入する車両等による交通事故の危険の存否
∨楫鐔菠場に搬入される産業廃棄物に含まれる有害物質による本件予定地周辺の大気
汚染の可能性の有無
K楫鐔菠場の操業等による本件予定地周辺の河川汚染の可能性の有無
に楫鐔菠場の操業等による本件予定地周辺の地下水の汚染の可能性の有無
ア.本件処分場の安全性
a.遮水工について
ー弯絅掘璽箸砲弔い
粘性度ライナーについて
O蛙絽|離轡好謄爐砲弔い
ぜ弯絅掘璽畔篏い砲弔い
b.水処理施設について
/蚕仗綵萢屬砲弔い
⊂散装置について
浸出水貯留槽及び処理水貯留槽について
c.キャピラリーバリアー型覆土について
イ.被告の維持管理計画が十分か
ウ.被告が適切な維持管理を行う経済的基盤・属性を有しているか
エ.原告のもとに有害物質が到達するか
オ.原告らの被害発生の可能性について
(5)判決内容について
1.原告の権利
「原告の人格権は重大なものであるから、これを侵害されるものは、この侵害行為を
予防するために差し止めを求めることができる。」
「被告は、処分場を操業する者として専門的な対策を講じるべき立場にあるし、最終
処分場の安全性を確保するために環境保全義務を負っているから、有害物質が処分
場外に流れ出ないことを証明すべき」
2.本件処分場から汚染水の流出はあるか。」
(1)本件処分場の安全性について
ー弯絅掘璽函 崋弯絅掘璽箸劣化する可能性が低い」
「遮水シートの接合部が脆弱であるとは一概にいえない」
「遮水シートの破損による事故事例を本件処分場にそのままあては
めることはできないが、当時の法令に従い適正に設置ないし管理
されていたはずの処分場においても事故が発生していることは無
視できない」
粘性度ライナー
「粘性度ライナーは、地下水に直接触れないようにする必要があるが、本件
処分場では、地下水集配水管が充分に機能するかについては疑問があり、
地下水が触れることによって、粘性度ライナーが機能せず、遮水シートが
破損した場合には、汚水が外部に漏出するおそれがある。」
O蛙絽|離轡好謄
「機能を有する」
ぜ弯絅掘璽箸諒篏
「被告主張の補修費用に関する計画は不充分」
タ綵萢
「放流基準水質を満たさない性能のまま滲出水処理装置が稼働するする可
能性は低い」
蒸発散処理装置
「処理能力を有すると認められる」
(2)被告は施設の維持管理を正しく行うことができるか。
嵌鏐陲示す計画に従った場合には、適切な管理が行われると認められる」
△靴し、「被告は、融資の確実性を示す証拠を何ら提出していない。被告が
融資を受けられるとしても通常の金融機関よりもかなり高額の利息
を負担することになるはずである。」
「多額の債務を返済するほどの資力を有しているという確たる証拠はない。被
告の事業計画が実行されるというには大きな疑問がある。」
ぁ崙穎唾賃里鮠里垢訌反イ鮖箸Δ箸靴董圧力をかけるなどしたことなどの問題も
あり、たとえ営業許可を受けて融資が実行されたとしても、不明朗な債務の支
払いに充てられることになる可能性が否定できない」
(3)本件処分場から汚水は流出するか。
「本件処分場施設の問題点や、被告の維持管理能力の欠如から、有害物質が処
分場外に流出しないという立証はなされておらず、流出する蓋然性がある。」
3.処分場から流れ出た有害物質が原告のもとに到達するか。
(1)本件処分場周辺の環境
嵌啣台地に居住する者には、生活用水・飲料水を地下水に頼って生活するもの
がいる。」
◆嵋楫鐔菠場付近の地下水と松ケ谷地区の地下水は一体・同一のものといえる。
本件処分場は、この豊富な量の地下水を蓄えた台地の谷部分に建設・操業され
ようとしている。」
「本件処分場付近の地下水と松ケ谷地区の地下水は一体のものであることが認
められ、地下水は多様につながっているから、汚染は広域にわたる。」
(2)原告らの被害発生の可能性
「松ケ谷地区で地下水を飲料水として使用しているものに被害が及ぶ。人は生
存していくために飲料水の確保が必要であり、かつ確保した水が有害物質を
含んでいれば、健康をかん゛いする蓋然性があるから、処分場を作ることに
よる公共性が認められても、差し止めは認められるべき」
4.結論
(1)産業廃棄物処分場を建設し、操業するにあたっては、周辺環境に充分配慮しなけ
ればならないが、本件処分場は地下水の豊富な地域に建設され、操業されようと
しており、立地の選定自体に慎重さを欠いた面があるといわざるを得ない
(2)そして、そのような地域に立地して産業廃棄物処分場を建設する以上、その操業
により有害物質が地下水に浸透することがないよう万全の措置が講じられるだけ
の経済的裏付けが必要であるのに、被告には適切な維持管理をするだけの経済的
な基盤を認めることができない。
(3) よって、差し止めを認める。
2007.2.25
高田 豊(東総)
(1)本件処分場計画の概要
ア.業者 株式会社エコテック(旧伸葉都市開発)
イ.施設の種類 産業廃棄物管理型最終処分場
ウ.処理する産業廃棄物の種類
汚泥、燃え殻、ばいじん、鉱さい、がれき類、金属くず、廃プラスチックなど
エ.設置場所 旧海上町、銚子市、東庄町にまたがる谷津、忍川の水源
オ.処理能力 埋立面積 4万7854
埋立容量 74万2838m3
(2)経過
1988年4月16日 伸葉都市開発、千葉県に産廃処分場建設の事前協議書を提出
1990年5月30日 県は伸葉都市開発に対し、処理水の忍川放流の変更を指示(忍
川が銚子市の水道水源であるため)
1992年5月25日 伸葉都市開発は処理水は忍川へ放流せず、蒸発散装置で蒸発さ
せる計画変更を届け出
1998年5月29日 千葉県は一市二町に事前協議終了を通告。
同年6月 8日 伸葉都市開発、産廃処分場設置許可申請を千葉県に行う。
同年8月30日 旧海上町は本件処分場建設の是非を問う住民投票を実施。建設
反対票97.6%
1999年4月27日 千葉県は蒸発散装置が計画どうり機能することは困難であると
し、申請を不許可処分
同年5月14日 伸葉都市開発、県の不許可を不服とし、旧厚生省へ行政不服審
査請求を申し立て
2000年3月30日 旧厚生省は、基準値を満たせば処理水は放流してよい、蒸発散
装置は義務づけていないとして、県の不許可処分を取り消す
2001年3月 1日 沼田前知事の任期終了間際に千葉県はエコテック(旧伸葉都市
開発)に対し建設を許可。
同年5月29日 原告7名で県知事に対し許可処分取り消しを求めて行政訴訟を
提起。
同年12月4日 県はエコテックに対し本件処分場工事着工を許可。
2002年2月12日 住民438名で本件処分場建設等の差し止めを求める仮処分命
令の申し立てを行う。
2003年1月24日 旧海上町議会、「エコテック産廃処分場建設反対と県民世論に
訴える」決議を議決。
同年6月 4日 仮処分命令申し立て却下。
同年10月15日 原告100名で「エコテック産廃処分場建設操業差し止め」を
求めて提訴(本訴)
2005年5月10日 仮処分申し立て却下に対する東京高裁への抗告棄却。
同年10月11日 最高裁で仮処分却下に対する特別抗告及び許可抗告棄却。
2005年11月25日 合併後の旭市議会で「エコテック産廃処分場建設反対と県民
世論に訴える」決議を議決。
2006年10月25日 本訴最終弁論、結審
2007年1月31日 千葉地裁、「エコテック産廃処分場の建設、使用、操業差し止め」
の判決を下す。住民側勝訴
同年2月13日 エコテック、判決を不服として東京高裁に控訴。
同年3月13日 行政訴訟最終弁論。結審。・・・5月中旬頃、判決言い渡し?
(3)原告100名の構成
*Aグループ
飲料水及び生活用水を地下水に依存する者であり、本件処分場から漏出する有害物質及
び汚染水により健康被害を被る者
*Bグループ
地下水を農業用水に利用する者であり、本件処分場から漏出する有害物質及び汚染水に
より、農作物の被害を受けるとともに、これによる健康被害を被る者
*Cグループ
表流水(忍川、その他河川)を農業用水に利用する者であり、本件処分場から漏出する
有害物質及び汚染水により、農作物の被害を受けるとともに、これによる健康被害を被
る者
*Dグループ
表流水(忍川)を水道水源として利用する可能性のある者であり、本件処分場から漏出
する有害物質及び汚染水により健康被害を受ける者
*Eグループ
本件処分場の建設、操業によりダイオキシンなどの有害物質の飛散によって健康被害を
被るとともに、良好な環境を享受する権利を侵害される者
(4)裁判の争点
)楫鐔菠場へ廃棄物を搬入する車両等による交通事故の危険の存否
∨楫鐔菠場に搬入される産業廃棄物に含まれる有害物質による本件予定地周辺の大気
汚染の可能性の有無
K楫鐔菠場の操業等による本件予定地周辺の河川汚染の可能性の有無
に楫鐔菠場の操業等による本件予定地周辺の地下水の汚染の可能性の有無
ア.本件処分場の安全性
a.遮水工について
ー弯絅掘璽箸砲弔い
粘性度ライナーについて
O蛙絽|離轡好謄爐砲弔い
ぜ弯絅掘璽畔篏い砲弔い
b.水処理施設について
/蚕仗綵萢屬砲弔い
⊂散装置について
浸出水貯留槽及び処理水貯留槽について
c.キャピラリーバリアー型覆土について
イ.被告の維持管理計画が十分か
ウ.被告が適切な維持管理を行う経済的基盤・属性を有しているか
エ.原告のもとに有害物質が到達するか
オ.原告らの被害発生の可能性について
(5)判決内容について
1.原告の権利
「原告の人格権は重大なものであるから、これを侵害されるものは、この侵害行為を
予防するために差し止めを求めることができる。」
「被告は、処分場を操業する者として専門的な対策を講じるべき立場にあるし、最終
処分場の安全性を確保するために環境保全義務を負っているから、有害物質が処分
場外に流れ出ないことを証明すべき」
2.本件処分場から汚染水の流出はあるか。」
(1)本件処分場の安全性について
ー弯絅掘璽函 崋弯絅掘璽箸劣化する可能性が低い」
「遮水シートの接合部が脆弱であるとは一概にいえない」
「遮水シートの破損による事故事例を本件処分場にそのままあては
めることはできないが、当時の法令に従い適正に設置ないし管理
されていたはずの処分場においても事故が発生していることは無
視できない」
粘性度ライナー
「粘性度ライナーは、地下水に直接触れないようにする必要があるが、本件
処分場では、地下水集配水管が充分に機能するかについては疑問があり、
地下水が触れることによって、粘性度ライナーが機能せず、遮水シートが
破損した場合には、汚水が外部に漏出するおそれがある。」
O蛙絽|離轡好謄
「機能を有する」
ぜ弯絅掘璽箸諒篏
「被告主張の補修費用に関する計画は不充分」
タ綵萢
「放流基準水質を満たさない性能のまま滲出水処理装置が稼働するする可
能性は低い」
蒸発散処理装置
「処理能力を有すると認められる」
(2)被告は施設の維持管理を正しく行うことができるか。
嵌鏐陲示す計画に従った場合には、適切な管理が行われると認められる」
△靴し、「被告は、融資の確実性を示す証拠を何ら提出していない。被告が
融資を受けられるとしても通常の金融機関よりもかなり高額の利息
を負担することになるはずである。」
「多額の債務を返済するほどの資力を有しているという確たる証拠はない。被
告の事業計画が実行されるというには大きな疑問がある。」
ぁ崙穎唾賃里鮠里垢訌反イ鮖箸Δ箸靴董圧力をかけるなどしたことなどの問題も
あり、たとえ営業許可を受けて融資が実行されたとしても、不明朗な債務の支
払いに充てられることになる可能性が否定できない」
(3)本件処分場から汚水は流出するか。
「本件処分場施設の問題点や、被告の維持管理能力の欠如から、有害物質が処
分場外に流出しないという立証はなされておらず、流出する蓋然性がある。」
3.処分場から流れ出た有害物質が原告のもとに到達するか。
(1)本件処分場周辺の環境
嵌啣台地に居住する者には、生活用水・飲料水を地下水に頼って生活するもの
がいる。」
◆嵋楫鐔菠場付近の地下水と松ケ谷地区の地下水は一体・同一のものといえる。
本件処分場は、この豊富な量の地下水を蓄えた台地の谷部分に建設・操業され
ようとしている。」
「本件処分場付近の地下水と松ケ谷地区の地下水は一体のものであることが認
められ、地下水は多様につながっているから、汚染は広域にわたる。」
(2)原告らの被害発生の可能性
「松ケ谷地区で地下水を飲料水として使用しているものに被害が及ぶ。人は生
存していくために飲料水の確保が必要であり、かつ確保した水が有害物質を
含んでいれば、健康をかん゛いする蓋然性があるから、処分場を作ることに
よる公共性が認められても、差し止めは認められるべき」
4.結論
(1)産業廃棄物処分場を建設し、操業するにあたっては、周辺環境に充分配慮しなけ
ればならないが、本件処分場は地下水の豊富な地域に建設され、操業されようと
しており、立地の選定自体に慎重さを欠いた面があるといわざるを得ない
(2)そして、そのような地域に立地して産業廃棄物処分場を建設する以上、その操業
により有害物質が地下水に浸透することがないよう万全の措置が講じられるだけ
の経済的裏付けが必要であるのに、被告には適切な維持管理をするだけの経済的
な基盤を認めることができない。
(3) よって、差し止めを認める。